ものづくり補助金との違いはどこにある?

令和6年度からスタートした「中小企業省力化投資補助金」、これは従来のものづくり補助金とは異なり、中小企業の業務プロセスの省力化や生産性向上を主な目的とした補助事業です。
今回は、現時点でわかっている中小企業省力化投資補助事業の概要とものづくり補助金との違いを解説します。

これまでのものづくり補助金

ものづくり補助金とは、企業が革新的な製品や技術を開発・製造するため、設備投資やソフトウェア投資に対して政府から支援される補助金制度の一つです。
約10年前に「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」の名称で始まり、以降名前を変えながら、令和6年の第18次公募まで実施されてきました。

ものづくり補助金は、これまでも公募回によって要件や申請枠が変更されてきました。今後、省力化投資を重点支援することが発表されています。

R5年度補正予算におけるものづくり補助金について

ものづくり補助金はR6年度から制度が変更されました。

主な変更点は、「申請枠」「類型」の変更です。

  • 省力化(オーダーメイド)枠の新設
    従来の補助金制度では支援しきれなかったニーズに応えるべく、創設された新たな申請枠です。人手不足の解消に向けて、デジタル技術等を活用した専用設備(オーダーメイド設備)の導入等が対象となります。デジタル技術とは、ICTやIoT、AI,ロボットやセンサー等が該当します。ロボット単体の導入ではなく、外部のシステムインテグレータ(SIer)との連携などによりロボットシステム等を構築する必要があります。
    補助上限金額が最大8,000万円(大幅賃上げ特例を使用しない場合)と大幅に引き上げられ、支援が重点化されます。
  • 製品・サービス高付加価値化枠とグローバル枠の整理統合
    大幅な賃上げに取り組む事業者に対する補助の拡充が行われ、補助上限額が100万円~2,000万円引き上げられます。省力化(オーダーメイド)枠の場合だと、最大で1億円もの補助上限額引き上げが適用される仕組みとなっています。
  • 大幅賃上げに係る補助上限額引き上げ特例の拡充
    大幅な賃上げに取り組む事業者に対する補助の拡充が行われ、補助上限額が100万円~2,000万円引き上げられます。省力化(オーダーメイド)枠の場合だと、最大で1億円もの補助上限額引き上げが適用される仕組みとなっています。
  • 海外展開支援の強化
    現行のグローバル市場開拓枠からグローバル枠になりました。引き続き、中小企業・小規模事業者が、海外事業の拡大や強化に必要な設備投資を支援します。
    2023年12月27日に発表されたものづくり補助金の公募要領によると、「製品・サービス高付加価値化枠」「グローバル枠」については、17次締め切り分では募集が行われないようです

「中小企業省力化投資補助金」と「ものづくり補助金オーダーメイド枠」との違い①-概要

「省力化」という同じ言葉が使われていますが、省力化投資補助金とものづくり補助金省力化枠では、補助対象や補助金額などの点で違いがあります。

省力化投資補助金
➡カタログに登録された設備の導入を支援

「省力化投資補助金」は、物価高騰と人手不足に悩む中小企業に対して、人手不足解消に効果がある設備投資に対する補助金です。カタログ登録された設備を導入し、省力化をはかることを目的としています。

「省力化投資補助金」は、即効性がある省力化投資を目的としているため、申請自体が比較的簡単でスピーディーに事業が実施できます。初めて補助金を活用しようという事業者の方も、比較的チャレンジしやすい補助金だと言えるでしょう。

ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠
➡個々の事業者に応じたオーダーメイド型の省力化投資を支援

「ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠」は、人手不足の解消を目的とした、生産プロセスの省力化を進めるための補助金です。

補助金額は大きくなりますが、申請までの準備にも事業の実施にも時間と労力がかかるため、補助金活用の難易度としては高いです。

「省力化投資補助金」と「ものづくり補助金オーダーメイド枠」との違い②-補助対象者・対象業種

いずれも補助対象者は中小企業や小規模企業者・小規模事業者などが対象です。

とはいえ、「省力化投資補助金」と「ものづくり補助金」の対象業種には以下の通り同じですが「省力化投資補助金」はカタログに掲載されている設備ごとで対象の業種が制限される場合があります。

省力化投資補助金
➡ 人手不足の課題があり、カタログに掲載される製品・設備を導入して省力化を図る中小企業等が対象

    • 製造業、建設業、運輸業、旅行業
    • 卸売業
    • サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)
    • 小売業
    • ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)
    • ソフトウェア業又は情報処理サービス業
    • 旅館業
    • その他の業種(上記以外)

ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠
➡ 多くは製造業の活用が多いですが、どの業種の設備投資も対象としています。

    • 製造業、建設業、運輸業、旅行業
    • 卸売業
    • サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)
    • 小売業
    • ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)
    • ソフトウェア業又は情報処理サービス業
    • 旅館業
    • その他の業種(上記以外)

「省力化投資補助金」と「ものづくり補助金オーダーメイド枠」との違い③-補助金額の上限と補助率

ものづくり補助金(オーダーメイド枠)と省力化投資補助金の補助金額の上限や補助率は以下の通りとなります。

補助金額の上限 補助率

ものづくり補助金省力化(オーダーメイド)枠

  • 従業員数5人以下:750万円(1,000万円)
  • 6~20人:1,500万円(2,000万円)
  • 21~50人:3,000万円(4,000万円)
  • 51~99人:5,000万円(6,000万円)
  • 100人以上:8,000万円(1億円)

※()内は大幅賃上げを行う場合。

1/2

小規模・再生事業者は2/3

※補助金額1,500万円までは1/2、1,500万円を超える部分は1/3

省力化投資補助金

  • 従業員5人以下:200万円(300万円)
  • 6~20人:500万円(750万円)
  • 21人以上:1,000万円(1,500万円)

※()内は賃上げ要件を達成した場合。

1/2

「省力化投資補助金」と「ものづくり補助金オーダーメイド枠」との違い④-対象設備

「省力化投資補助金」と「ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠」の対象設備について、以下の違いがあります。

省力化投資補助金
➡ 公表されているカタログに掲載された機械装置等に限定

省力化投資補助金は、省力化設備として国が指定する機械装置等の導入を支援する制度です。対象となる設備は、事前に公表された機械装置等のカタログに記載されたものに限定されます。

ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠
➡ 生産性向上に資するオーダーメイドの機械装置や専用ソフトウェア

ものづくり補助金は、より幅広い設備投資を支援します。カタログ型ほど対象設備が限定されていないのが特徴です。

つまり、カタログ型は指定された機械装置に限定されるのに対し、ものづくり補助金の方が自社の取り組みに合わせて広い範囲が対象設備になります。